2013年10月4日金曜日

赤竜 1 その21

 イヴェインは自分より小柄なレインボウブロウに精神的に寄りかかっていた。年齢はレインボウブロウの方が上だが、とても40歳には見えない。故買屋が30年前に出会った10歳程度の子供は、別人に違いない、とオーリーは思った。
「レニーはソーントン氏の友人だと言うが、何処で知り合ったんだい。」
 オーリーはわざと意地悪な質問をしてみた。レインボウブロウはいつもの如く曖昧な返事をした。
「オルランドがタンスを買った。彼の寝室に現在も置いているビクトリア様式の小さな物で、当時のお金を今のレートに換算すると5万ドルになる。」
 それがどうして出会いのきっかけになりうるのか、オーリーが尋ねる前に、イヴェインが割り込んだ。
「まあ、あのタンス、そんな値打ち物だったの、どうしよう・・・」
「どうした。」
「先々週、お掃除している時に掃除機をぶつけて、角に傷を入れてしまったわ。」
 レインボウブロウが髪の毛に指を突っ込んだ。
「私の修復で誤魔化せるかな。あれをオークションに出して売れたら、あなたに車を買ってあげられるのに。」
 二人の女性が互いに見つめ合った。オーリーが入り込む隙もなく、彼女たちは同時に立ち上がった。
「御免なさい、兎に角、傷を見て頂戴。旦那様がお気づきでなかったから、目立たないと思うけど。」
 オーリーは食堂に取り残された。またもや、レインボウブロウにはぐらかされてしまったことは確実だった。

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