2017年7月16日日曜日

「ドーマーズ」の INDEX 2

スピンオフ集

1.侵略者 
   ラベル spinoff1
    ニコラス・ケンウッドとローガン・ハイネ・ドーマーがいかにして親友となったか

2.後継者
   ラベル spinoff2
           ケンウッドとハイネがさらに友情を紡いでいく

2016年9月11日日曜日

2016年7月30日土曜日

4X’s      2

「人前に出すのを避けているんだな。」

ポールの呟きを聞こえなかったふりをして、ダリルはドアを開けた。ポールはそれに気づくと、階段を上り、家の中に足を踏み入れた。
 外が強烈な陽光で明るかったのと対照的に、屋内はひどく暗くひんやりとしていた。ダリルは自分の貧しい生活を恥と感じたことはなかったが、ポールの目にはどう映っただろうと気になった。家具の多くは彼の手造りだ。新しいのは息子の作品も混ざっている。店で買った物は少ない。自給自足に近い生活で彼は満足だったが、ポールには想像もつかないだろう。

「何か冷たい物でも飲むか、ここにも冷蔵庫くらいはあるんだぞ。」

台所に向かいかけるダリルの手をポールが掴んだ。振り返ると、引き寄せられた。

「お茶を飲みに来た訳じゃない。仕事の話だ、ダリル。」
「飲みながらでも出来るだろう。逮捕される前に君とお茶を飲ませてくれ。」

ポールはいつも職務に忠実だった。今も変わらない。肩から力を抜くことを知らないんだ。ダリルはポールの手の力が緩んだ隙に、相手から離れた。
 台所の窓から畑を見ると、ライサンダーは既に三分の二を耕し終えていた。
 ソーダ水を運んで行くと、ポールは木製の椅子に座って新聞を漁っていた。地元の薄っぺらな新聞だが、1日おきに郵便屋が配達してくれるので、映りの悪いテレビや雑音の酷いラジオよりは頼りになるニュースソースだ。もっとも、ニュースは地元の話題がほとんどだったが。
 ダリルはトレイをテーブルに置き、ポールの向かいの一人掛けの椅子に座った。
「ビールは飲めなかったよな、ポール?」
「ああ」

ポールは新聞を置き、タンブラーを手に取った。

「息子の母親はどうしたんだ、ダリル。君は婚姻登録も子孫登録もしていないが。俺は君の住まいを見つける為にあらゆる法律上の記録を調べたが、この辺鄙な土地の住所登録で君の名前を発見するまで、何一つ見つけられなかった。あの息子は婚外出生児か、それとも違法出生の子供なんだな?」

 彼の詰問口調に、ダリルは否定しなかった。

「私の息子は遺伝子管理局の目を盗んで産まれた。私が創ったんだ。」
「ダリル・・・」

 ポールが首を振った。

「君なら、申し込めばいつでも養子がもらえたはずだ。何故、そんな違法を・・・発見されれば再教育は免れられないぞ。息子は管理局に収監される。君の子供ではなくなるんだ。
わかっているだろう、君自身の仕事だったんだから。」

 ダリルはポールを見つめた。何故わかってもらえないのだろう。管理局からもらう子供など欲しくなかったのだ。誰の子供かわからないクローンなんか。
 ダリルは席を立ち、ポールの隣に移動した。ポールは動じなかったが、タンブラーをテーブルの置いた。

2016年7月24日日曜日

4X’s      1

「父さん、誰か来るよ。」

 ライサンダーがそう声をかけた時、訪問者の自動車はすぐ近くまで来ていた。ダリルは息子に「屋内に入っていろ」と言いかけて止めた。
間に合わない。車内の人間には二人の姿がはっきり見えているはずだ。多分、ライサンダーの緑色に輝く美しい黒髪も。
ダリルは手に付いた泥を払いながら立ち上がった。自動車のナンバーは東海岸のものだ。
またあの連中か、と彼が諦めの溜息をついた時、自動車は土埃の中で停車した。
ドアが開き、スキンヘッドの男が一人、今朝はピカピカに磨き上げられたであろう黒い革靴を埃まみれにしながら畑の縁に降り立った。スーツの上着を車内に脱ぎ置き、シャツの袖は肘まで捲り上げ、毛深い腕を露わにして、男は黒いサングラスを手に取った。

「やあ、ダリル、久し振りだな。元気そうだね。」

親しげに笑いかける男の顔を見て、ダリルは少しばかり驚いた。

「君か、ポール。驚いたな、まるでトニー小父さんみたいだ。」

かつての仕事仲間の出現に安心して、ダリルは訪問者に近づいた。
ポールは腕を伸ばし、彼と握手して、次に抱き合った。互いに相手の背中をたたき合った。

「相変わらず、いい体してるなぁ、鍛えているのか?」

ダリルはポールの引き締まった筋肉の感触に、かつての胸のときめきを思い出し、相手に気づかれないように用心深く身を離した。お互いの顔が直ぐ目の前にある。

「まだあそこで働いているのか?」
「そうだ、俺にはあそこしかない。君のように外へ出る勇気はない臆病者だから。」

ダリルはポールのすべすべした肌を見つめた。とても同じ年齢には見えない。
勿論、彼にはわかっていた。あそこに残っていれば、彼も若くいられたのだ。

 だが、それはこの星の住人には不自然なことだ・・・

ポールがライサンダーを振り返った。

「子供か?」

ダリルは覚悟を決めた。ポールの目は誤魔化せない。真実を明かした方が安全なはずだ。

「ここは日差しが強いから、中で話そう。ライサンダー、すまないが後をやっておいてくれないか。」

息子は一人で耕すはめになったは畑を哀しそうに眺めた。

「終わったら釣りに行ってもいいかな、父さん?」

機嫌はとっておいた方が良い。ダリルは「いいとも」と許可を与えた。
畑は小さいし。川へ釣りに行ってくれた方が、話を聞かれなくて済む。
石造りの家に向かいながら、ポールが尋ねた。

「俺を息子に紹介しないのか? 息子の紹介もなかったな。」
「来客には慣れていないんだ。」

ダリルは言い訳した。

「礼儀作法はなにも教えてないんだよ。」

ポールは入り口に続く石段の中途で足を止め、畑を振り返った。
小型トラクターで土を掘り返すライサンダーが見えた。
帽子からはみ出した髪がキラキラと淡い緑の光沢を放っている。

2016年3月27日日曜日

ドラマの感想「ロング グッドバイ」

レイモンド・チャンドラーの原作を読んでいないし、アメリカ映画版も見ていないので、比較は出来ないけど、NHK版のドラマは面白かった。
1話から最終話5話まで一挙放送を一挙に見てしまったわ。

ロンググッドバイ公式ページ

浅野忠信さんは好きな役者さんの一人だけど、ドラマ主演が初めてと言うのは驚いた。
映画では主演あったと思うけど・・・

戦後日本に舞台を移して、退廃的なムードが漂っている。
主人公の探偵は、すごくかっこいい。
正義の味方とか、熱血漢とか、そんな作り物の探偵じゃないし。
珈琲を沸かして、バーでギムレットを飲んで、クラシックな車(左ハンドル)を運転して。
クールで、何かいつも一歩さがって物をみているような。

綾野剛さん演じる保は、頼りない優男に見えて、実はしたたかなヤツだったって、最後にわかるけど、でも主人公のことは好きで、元妻のことを愛していて・・・
可哀想な男だなと思う。
戦争がなければきっと幸せな普通の夫婦でいられただろうに。

小雪さんは、あまり好きな女優さんではないけれど、このドラマでは巧い女優さんだと思った。
精神状態がぼろぼろなのに、うまく隠して男達を美貌で誘惑して使っている。
哀れな女なのに、それを感じさせないで男達を翻弄している。その根底には引き裂かれた元夫への愛情があって。

柄本明演じる大物政治家の嫌らしさ。しかし民衆は明るい社会を語る彼に熱狂する。
実生活が苦しいから。
実際に戦後の日本はそうだったのだろう。強烈なリーダーシップを持った政治家たちがもてはやされた。
今の政府もそんな傾向がありそうな。
でも政治家って、大概怪しげなものだ。

2015年10月28日水曜日

渋いカラス

渋いカラス

先日、駐車場に車を駐めて、車内で時間調整をしていたら、隣の建物の平屋根にカラスが飛来しました。

カラスは真っ赤に熟した柿の実をくわえていました。

柿の実を食べようとして、屋根の上を行ったり来たり、でも場所が気に入らなかったらしく、今度は横の斜めになった屋根の小屋へ移動しました。

どうして丸い実を斜めの屋根で?
転がるかも知れないのに?

と心配していたのですが、カラスはそこが気に入ったらしく、柿をつつきました。

私はそこではたと気が付きました。

熟した柿からは汁が流れ出ます。
カラスはその汁で足を濡らしたくなかったのです。

だから斜めの屋根を選んだのです!

頭がいいなぁ、流石にカラスだなぁ! と感心していたら、カラスは柿を2,3回つついた後、それを放置して飛び去りました。


渋かったんやね・・・

2015年6月18日木曜日

ちどりや


多分、「千鳥屋」と漢字で書いていたのだと思いますが、私の記憶の中では漢字の看板はないのです。
垂水区の県道、垂水東口から名谷に行くバス道の山側に、石垣やコンクリートの壁が続くところがあります。
「クラブ前」と「千鳥が丘下」のバス停の間の区間です。
この壁と言うか、元は崖だったのかも知れませんが、そこにガレージみたいに穴を開けた様な店舗がありました。
駄菓子、パン、アイスクリーム などの店、と私は認識していましたが、今思い出してみれば魚の干物や豆腐やちょっとした調味料なども置いていたみたいです。
狭い店で、おばちゃんが一人で店番をしていました。
客の多くは子供だったと思いますが、駄菓子屋ではありませんでした。
我が家はこの店で食パンを買い、子供がお手伝いをするとご褒美にアイスを買ってもらえる店でした。
夜はシャッターを下ろしていたと思います。
店の前は県道で年々交通量が増えて危険になり、小学校では「歩道のない道は通ってはいけません」と指導していましたから、「ちどりや」にとって辛い時代になっていったことでしょう。


小学校の3年生の頃でしたか、福田側の東側に「川原センター」と言う商店街のミニ版が出来ました。
垂水の廉売市場よりは貧相な、でも店舗が数軒並んだ、住宅街では画期的な場所です。
「ちどりや」は、それを機会に閉店しました。
「これからは川原センターでお買い物して下さい」と言う意味の貼り紙がしてあったそうです。
千鳥が丘や福田町から川原センターは遠いので、私達は大いに不満でしたが、店の決心は固かったのです。
もしかすると、おばちゃんはもうお歳で、新しい店に対抗する気力がなかったのかも知れません。

「ちどりや」は、私が初めてお金を握りしめて自分でお買い物をしたお店でした。