2013年10月9日水曜日

赤竜 1 その25

一番の謎はレインボウブロウだ。彼女が全ての鍵を握っている。ソーントンが殺された理由も、イヴェインが生きていることも。レインボウブロウはイヴェインが”殺された”時、「頭が無事だった」、と言った。ソーントンの頭部が見つからないことと関係あるのだろうか。
 オーリーは再びエイブラハム・フライシュマンを訪ねた。
「死んだ人間を生き返らせる方法を書いた本はありますか。」
 フライシュマンはこの質問を喜ばなかった。
「禁断の魔術だね。」
「全ての魔法はキリスト教では禁断のものでしょう。ユダヤ教でも同じだと思いますけど。興味本位で探しているんじゃありません。捜査に必要なんです。」
「捜査に魔法を使うのかね。」
「いいえ、犯人が魔法を使った・・・もとい、魔法を使おうとしていたんじゃないか、と思うんです。」
 フライシュマンはオーリーに椅子を勧めた。脚のバランスが悪くて少しがたついた椅子だった。
「オーランド・ソーントンはどんな殺され方をしたのか、聞いてもいいかな、刑事さん。」
 もう事件発生から二週間以上たっている。隠すこともなくなった。ただ、公表していないだけだ。署長はソーントン事件を忘れていた。他にも事件がいっぱい あったし、出世に関係ないものは直ぐ忘れる人だった。オーリーは「公表されていないので、口外しないで下さい。」と念を押してから、死体発見当時の説明を した。フライシュマンは白い眉を寄せて不快を表した。
「それは、魔法を信じる者の仕業だと、君は考えるのだな。」
 老人は腰を上げて書庫に入って行った。数分後に戻って来た時、彼の手にあったのは、「赤竜」だった。

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