2013年1月15日火曜日

顔を泥だらけにした女の子がいた。きちんとパーティー用の服装をしているのに、顔だけ汚れている。親はどうしたんだ、と思いつつ、注意した。

「ちゃんと鏡を見て綺麗にするんだよ」

夜のパーティーだから、子供はほとんどいなかったが、同伴してくる親もいない訳ではない。きっと子守が見つからなかったのだろう。
その子は10歳ほどに見えた。おめかししているのに、顔だけ汚れている。

「だって、鏡を見るの、怖いんだもの」

と言った。

「どうして?」

「怖いものが映るの」

「何かな?」

「おじさんなの」

要領を得ないので、その子を連れて会場を出て、トイレに行った。男子トイレに女の子を連れ込むのは、あらぬ疑いをかけられる恐れがあったので、入り口のドアを大きく開いたままで、子供を鏡の前に連れて行った。

「ほら、何も映っていないだろ・・・」

そこで、ボクは絶句した。
鏡の中に映っていたのは、ボク一人。ボクの前に立っている女の子は鏡の中にいなかった。

「ほら・・・」

女の子は鏡の中のボクを指さして言った。

「おじさんが映っているでしょ?」

ドアがバタンっと閉まった。

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