2013年1月21日月曜日

もしもピアノが

そこは、大きな家だった。
部屋数なんて無数にあって、よりどりみどりだった。そこで、母さんは好きな場所を選んで、寝室をこしらえて、僕らを産んだんだ。
家の前では、人がしょちゅう行き来していたけど、僕らのことは気づかなかった。みんな、この大きな家に無関心だっただね、きっと。
無責任だね、こんな大きなもの、こしらえて、大金はたいて購入して、飽きたらほったらかしなんだから。
でも、お陰で僕らは難なく安全な家を手に入れたから、良かったんだろう。
僕らは少し大きくなると、家の中を走り回って遊んだ。母さんが「静かになさい」と注意しても、僕らはきかなかった。
そしたら、外で問題になったらしい。
「あの部屋から、音がするんです。誰もいないはずなのに」
意を決した様な真剣な顔で近づいてくる人を見て、僕らは息を潜めていた。
母さんが心配した通り、良くない事態になった。
母さんは僕らをつれて大急ぎで引っ越した。
その直後だった、家の正面の大扉が開かれたのは・・・。

「奥さん、駄目じゃないですか、ちゃんと毎日弾いてあげてくださいよ。年に一回は調律もしてやらないと・・・え? なんだ、これ?

奥さん、これは、ネズミの巣ですよ! ピアノの中にネズミの巣がありますよ!」

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