2013年11月12日火曜日

赤竜 2 その13

イヴェイン・カッスラーが居間に出ていくと、オーランド・ワールウィンド刑事は既に勤務に就くべく出ていった後だった。珍しくレインボウブロウが夜だと言 うのに外出せずにソファに寝そべってテレビを見ていた。イヴェインはソファとL字形を形作るもう一辺の椅子に座った。レインボウブロウが見ているのはナ ショナルジオグラフィックで、爬虫類の特集だった。イヴェインは番組には興味がなかった。
「さっきは御免なさい。」
と彼女が恐る恐る話しかけた。
「あなたもオーリーも私を気遣ってくれているって、わかっていた。でも、素直になれなかったの。あなたたち以外の人は、私が旦那様の遺産を受け継いだこと を知ってから、友達になった。彼らの何処までが本心で、どこからが偽りなのか、私は解らない。毎日が緊張の連続で、誰を何処まで信じていいのか、混乱して いる。だから、あなたやオーリーの忠告を受けた時、感情の抑制が利かなくなったの。御免なさい、折角食事の用意までしてくれていたのに。」
 レインボウブロウは目だけ動かして彼女を見た。もう瞳孔は閉じて細くなっていた。
「あなたはまだ子供。」
と彼女が言った。
「だから、オルランドがあなたを愛していると気が付かないだけ。」
 イヴェインが姿勢を正した。
「彼がいい人だと知っているつもりよ。でも、今はそれだけ、お友達以上の気持ちを持てない。」
「では、彼にそう言えば・・・」
 レインボウブロウはあくまで他人の心に距離を保とうとした。だから、イヴェインが椅子から離れて、ソファの下の敷物の上に座り、レインボウブロウの鱗に覆われた胸を撫でた時、少しびっくりして、上体を浮かしかけた。

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