2012年12月30日日曜日

空き地にいた怪獣

緩やかな丘の斜面に、二段になった空き地があった。上の空き地と下の空き地の境目は1メートルほどの土の土手で、雨が降ると土が流れ、えぐれた。その小さな峡谷は子供たちが行き来する通り道になった。
 子供の足で削られ、雨に流され、風でやすりをかけられ、土手は複雑な表情になった。
 ある時、峡谷と峡谷の間の突き出た所が、何かの顔に見えることに気付いた。

「怪獣だよ、怪獣の顔!」

 確かに、当時テレビで人気の着ぐるみ怪獣が出る子供番組に、よく似た怪獣が出ていた。 主人公の少年の友達で、少年は怪獣の頭に乗って移動するのだ。
 子供たちは早速そこに座って、しばしヒーローになった気分を味わった。

だけど土の怪獣は一つしかなかったから、取り合いもあった。子供が暴れると怪獣のホッペから土がぽろりと落ちた。
 誰かが目が欲しいと思い、怪獣の横顔に石をはめ込んだ。
 なんだかしまらない顔になってしまった。
 石をはずすと、さらに情けない空洞が出来て、そこからまた土がボロボロ落ちた。
 だんだん日を追う毎に怪獣は崩れていき、大雨が降った翌日、姿を消していた。

 ただの土塊になった土手の突っ張りを見て、子供たちは、やっぱり怪獣は本当はいないものなんだ、と思った。


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サリーさんの感想

「ただの土塊になった土手の突っ張りは、やっぱり怪獣は、おまえらだよ、と思った。」

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