2012年12月30日日曜日

発表の日(2話)

高校の発表の日、家中が落ち着かなかった。妹は私について来てくれと言う。母と一緒は、落ちた時に嫌なのだそうだ。叱られるにしても慰められるにしても、 母は言葉が多すぎる。だから、姉の私にいてもらった方が気が楽なのだと言い訳した。母も納得する。落ちた時に娘にどう対処して良いのかわからないのだ。
 妹が受験したのは私が通っている高校だから、私には通い慣れた道。往路、妹は落ちた場合の進路を自分でしゃべり続けた。滑り止めは受けていな い。彼女は中学浪人する覚悟だった。ちょっと悲壮感が漂うのは、その年の競争率が大変高かったからだ。妹の学年は生徒の人数がやたらと多かった。
 心配は無用で、妹は無事に合格していた。それでも彼女は掲示板で自分の番号を確認した途端、私に抱きついて感涙した。
 帰路は往路より饒舌で、入学したらどんな部活に入るかとか、どんな先生に出会えるか、とか希望に満ちた言葉が彼女の口から出た。
 自宅の最寄りの駅で降りた時、妹は大事なことを思い出した。
「中学校に報告しよう!」
 二人で母校に向かって歩き始めた。
「あ、BちゃんとCちゃんだ」
 妹の同級生が中学校の方角から歩いて来るのが見えた。
「あの子たちも報告してきたんだね」
「私、結果を聞いてくる!」
 幸福感でいっぱいの妹は走って行った。だが、途中で立ち止まり、道路を渡って反対側に行ってしまった。
 私の横を二人の少女が肩を抱き合うようにして通り過ぎて行った。どちらも俯いていたので妹には気づかなかった。
 やがて、私が妹のそばに行くと、彼女は道路を渡って戻って来た。
「泣いていたね。」
「うん。」
 それっきり妹は黙り込み、学校に向かって歩き続けた。

「春は残酷だ」

なにかで聞いた言葉だ。日本中で悲喜劇が繰り広げられる。
だけど、あの子たちが別の道を見つけたように、誰にでも選択肢は残されている。とくに、十代の人には。



***********
大学の合格発表の時、私は一人で行った。自信がなかった。
阪急六甲から長い坂を徒歩で上っていくと、向かい側から同じ高校のN君が降りてくるのと出会った。結果がどうだったのか、彼はジロリと私を睨んだだけですれ違った。
あれ、彼は落ちたのかしら? それとも、落ちたのは私で彼は慰めるのをためらった?
どきどきしながら上って行き、掲示板の前に行くと、まだ大勢いて騒いでいた。
私の番号があった!
何度も受験票と見比べて確認した。
やっと安心出来て、門を出ようとしたら、いきなり同じクラスのFさんが飛びついてきた。
「受かったね!おめでとう! 私も受かってん!」
びっくりした。Fさんは同じクラスだったが格別親しかった分けではなかった。それなのに、私に抱きついて喜んでいた。

幸せって、こう言うことなんだ。自分が幸せだと他人の幸せも素直に祝福出来るんだ。

「ねぇ、時間ある? ご飯食べに行こうよ! グラタン食べようよ♪」

きっとFさんは、合格したら三宮のレストランで好きなグラタンを食べる、と決めていたのだろう。高校では一緒にお弁当を食べたこともなかった私をお気に入りのお店に案内してくれた。

私のグラタン初体験となった♪

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントを有り難うございます。spam防止の為に、確認後公開させて頂きますので、暫くお待ち下さい。
Thank you for your comment. We can read your comment after my checking.