2013年9月13日金曜日

赤竜 1 その13

レインボウブロウはイヴェインを真っ直ぐに見た。
「彼は相続人に血縁を問題にはしなかった。」
「レニー、あなたは旦那様の何に当たるの。」
 それがオーリーにも一番気になる疑問だった。屋敷の主が無惨な死体で発見された。彼の娘と思われた女性は血縁関係を否定し、夫婦でもなさそうだ。彼女が相続権や怨恨と何らかの関わりがあれば、容疑者の一人にもなるのだ。
 給仕が料理を運んできたので、会話は一時中断された。オーリーはレインボウブロウが素晴らしい料理人の店を選んだことに気付いた。どの料理も美味しかっ た。食欲がなさそうだったイヴェインでさえ、食べている時は幸せそうだった。当のレインボウブロウは魚のカルパッチョを少し口に入れただけで、後はワイン をゆっくり味わっていた。
「遺言状が正しく守られることを見届けたら、私はこの街を出て行こうと思う。」
と彼女が言い出したのは、メインディッシュが終わった頃だった。イヴェインが手にした水のグラスを危うく落とすところだった。
「どうして、何処に行くと言うの。あなたの家でしょう、あのお屋敷は・・・」
 するとレインボウブロウが彼女に質問で返した。
「あなたはあの家に住めるのか。オルランドの血で汚されたあの場所に。」
 オーリーはイヴェインの顔から血の気が失せるのを感じた。彼女は昨晩の惨状を思い出してしまったのだ。グラスを置いて、彼女は両手で顔を覆った。
「あの家は私が生まれて初めて人間として扱ってもらえた家。旦那様は私には神様だった。誰があんなことをしたの。」
 泣き出してしまった。オーリーは困惑して、レインボウブロウを見た。なんとかしろよ、と目で訴えた。レインボウブロウは彼女を泣かせたことを後悔していなかった。
「デザートがまだだ。食べてから帰るか、それとも今帰るか。」
と尋ねた。

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