2012年9月30日日曜日

聞いた話

奈良県に住む友達の娘が中学生の時の話。

クラスの仲良しばかり数人で、近所の山へハイキングに行った。
森の小道を散策し、なだらかな斜面で町を見下ろしながら、お弁当を食べ、道中お喋りしながら、半日楽しく過ごした。
途中で、誰かが草むらに白い木の破片の様な物が散らばっているのを見つけた。
真っ白だったので、注意を惹いたのだ。よく見ると、動物の骨らしい。
友達の町では、珍しくなかった。奈良県は鹿が多く、ちょっと藪に入ると自然死した鹿の亡骸などを見つけることもあるのだ。
友達の娘は動物の骨に興味がなかったが、物好きな女の子が一人、大きめの骨を記念にと拾って帰った。

その夜、友達の家に警察官が来た。
骨を発見した時の状況を詳しく知りたいと言う。
なんでも、拾って帰った子の親が、その骨を見て、鹿の骨ではない、と感じて、警察に通報したのだと言う。
警察でも、それは人の骨だろうと言うことで、検屍官に見せ、果たして人骨であると確認されたのだ。
友達の娘はどきどきしながらも、しっかりと見つけた場所や骨の散らばり方、他のゴミと思われた遺留品などを語った。

警察官は彼女に感謝して帰って行った。
友達の一家はその夜、ちょっと興奮してよく眠れなかった。
学校でも、その話でもちきりになった。警察官はあの時ハイキングに参加した子供たち全員の家に来ていた。不思議なことに、それが全部同じ時刻だった。ちょうど子供たちが好きなドラマが終わった時刻だったので、みんな覚えていた。
友達はちょっとおかしいな、と思った。10人近い子供の家に一斉に事情聴取に来るものだろうか。警察官がそんなに大勢繰り出すような事件なのだろうか。
友達は警察に電話してみた。あちらこちらと電話は回された。と言うのも、友達の家に巡査を寄越した刑事とか、捜査課が見つからなかったからだ。
最後に、骨の通報を受けた刑事がやっとつかまったが、巡査を生徒の家に派遣した覚えはないと言う。
「確かに人骨でしたが、自殺者と思われ、事件性もないので、そんな夜分に子供さんから事情聴取するようなことはありません。」

では、子供たちの家に同時に現れた警察官たちは何者だったのだろう。
切れ長の涼やかな目に、かすかにニキビが残っていた頬、きりっとした薄唇、顎の左にあった黒子・・・目撃者の証言は全部同じだった。
そして、一つ判明した・・・

心神耗弱状態で数年前に退職した元警察官が一昨年の末から行方不明だったこと。

2 件のコメント:

  1. 警察官は彼女に感謝して帰って行った→これが全てですね。見つけてくれた事への御礼が言いたかったのでしょう。何か切ないです。

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  2. 前半は実話。
    後半はフィクション。

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