2012年10月6日土曜日

サンドールの野を愛す 序章

サンドールはアメリカ西部の何処かにある町。
 牧畜とそれに付随するささやかな産業しかない小さな町。何処にでもいる平凡な善良な人々。ああ、多分アメリカで一番平和な町じゃないかな。

 だって、ここには彼がいるもの。

 彼が何処から来たのか、誰も知らない。だって、最初にサンドールの住人が町を造った時、もう彼はそこにいたから。彼は僕らに混ざって働いて、飲んで騒いで歌って眠って・・・もう何年何十年とここにいる。
町が出来て140年? じゃぁ、彼は140年いるんだよ。

   彼はサンドールの町そのものかも知れない。
住人は子供が生まれたら、彼に最初に見て貰いたがる。名付け親を頼む人もいる。彼は赤ちゃんの子守をしたり、 子供たちの遊び相手になったり、もっと大きくなった思春期の少年少女たちの相談相手になる。
子供は大人になると、暫く彼のことを忘れるんだ。生活に忙しい からね。だけど、ある日、ふと寂しくなったり、人生に躓くと彼のことを思いだして、町外れの彼の小屋へ行って、彼が薪割りしたり大工仕事をしているのを眺 める。彼は別に人生の指南なんかしないんだ。ただその日やるべきことをやっているだけ。それを見た人が何かを思い出したり、学んだりして、気持ちの整理を つけて家に帰る。

 年寄りは彼に昔話を聞いてもらうのが好きだ。彼は何時間でも同じ話でもちゃんと耳を傾けてくれるからね。
だけど、僕は知ってる。
彼にとって、老人の昔話は、「最近の出来事」なんだってことを。

 もし、彼に会いたかったら、サンドールへおいでよ。
 晴れた日には、野原へ行くといい。
 草の上に、歳を取ることを忘れた、永久に19歳の姿のままで生きる彼が座って草笛を吹いているから。

 彼?

 トワニ 

って呼ばれてるんだ。

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