2012年2月16日木曜日

密談

車から降りると、取引相手もベンツから降りてきた。
 お互いに警戒しあいながら、相手なのだと確認しあう。

「誰にも見られたり、後をつけられなかっただろうな?」
「大丈夫だ。女房にすら気取られていない。」
「例のもの、持ってきたか?」
「勿論だ。そっちは? ちゃんとキャッシュも持ってきたんだろうな?」
「当然だ。金がなくちゃ、話にもならん」
「では、おまえの物を見せろ」
「いや、そっちが先だ」
「では・・・3で一緒に出そう。1・・・2・・・3!」

 二人は紙切れを互いの目の前に差し出した。

「ううう・・・ちょっと高いんじゃないのか?」
「これが現行の相場だ。仕方がないじゃないか、アメリカとの取引はまだ停止中なんだ。そちらこそ、ちょっと法外じゃないのか? 中国産で誤魔化すつもりじゃないだろうな?」
「馬鹿言え、これは正真正銘、丹波産だ」
「では、ブツを渡そう。そっちとの差額代金も払う」
「いいとも、これで助かった。品切れでにっちもさっちも行かなかったからな」

 二人の男は包みを交換した。

 丹波産松茸と近江和牛ロース肉である。

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