2011年10月5日水曜日

古い旅館の怪

お化けが出ると評判の古い旅館に泊まってきました。
心霊写真の撮影が趣味の友人や霊感が鋭いと自慢の友人と一緒でした。
霊の存在を信じないと言う元レスリング部の職場の先輩も興味本位で参加しました。

旅館は現在も営業しているので、名前や所在地は伏せます。

昼間も薄暗い入り口を、引き戸を開けて入ると、すぐ左手に寿司屋の様なカウンターがあり、実際にそこで旅館の主人が寿司を握っています。
古い旅館は流石に宿泊客が少ないので、普段は寿司屋として営業しているのです。ですから、そのカウンターが、旅館のフロントも兼ねていました。

「いらっしゃい!」

お化けが出る旅館にふさわしくない威勢の良い声で迎えられ、予約していることを告げると、すぐに若い仲居さんに部屋まで案内されました。

畳敷きの古い日本間でした。
天井には染みがあり、お化けの顔でも浮かんでいそうでした。
照明は裸電球、暗くて読書には向きません。
暖房はコタツと、カートリッジ式の石油ストーブだけでした。
ストーブはまだ火を入れる時期ではなかったので空っぽで、コタツだけが電気で使えました。
ガラス戸の外の庭は趣のある坪庭で手入れが行き届き、お化けが出そうにありません。
今時珍しい真空管のテレビを見て暇をつぶし、懐石料理の夕食を取ると、お風呂へ。
お化けはお風呂に出るのか、とちょっと緊張しましたが、五右衛門風呂の珍しさですぐ忘れてしまい、貴重な体験を楽しみました。

霊感のある友人も、心霊写真趣味の友人も、何も感じないと言い、レスリング部出身の先輩は、「だからいないって言ったじゃん」と笑いました。
夜遅くまで語り合いましたが、結局お化けは出ず、テレビを消して寝ました。

翌朝、美味しい和風の朝食をいただいてから、チェックアウトしました。
寿司カウンターのレジで支払いをしていると、女将さんが、
「夕べは何もない部屋で退屈だったでしょう。」
と言うので、
「いいえ、お喋りですぐ時間がたってしまいましたよ。それにテレビも見たから。」
と言いました。
すると、女将さんが怪訝そうな顔で言いました。

「あのテレビ、映らないでしょう? 地デジ対応じゃないんだから・・・」

2 件のコメント:

  1.  真空管のテレビがお化けだった!? 盲点でした。(ーー;)

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  2. ある種のブラックユーモアです。
    テレビの付喪神?

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