秋の休日。ヒロシとヨーコは田舎にドライブに出かけた。
最初はオーカワチのダム湖に行った。ここは山の中腹と頂上にダムが二つあり、それぞれに湖がある。高低差を利用した水力発電所なので、見学施設も整っており、静かな湖畔とは言い難い。なにしろ観光客が多い。ダム見学の子供たちでいっぱいだった。
それでも高原の涼しい風とススキの野原に心は癒される。
ダムの下流には、多分電力会社から自治体に下りたお金で建てられたのであろう、小さなホテルがあった。観光の目玉はダムしかない田舎町だから、宿泊よりもレストランの客で保っているようなホテル。ヒロシとヨーコもそこで川魚を使ったフレンチで昼食を取った。
オーカワチの町を出ると、シルバーマインロードと呼ばれる国道を北に向かって走った。昔はこの付近に銀鉱山があって、その鉱石を港まで運んだ道 路なのだそうだ。と言っても、特に道筋にそれに縁のある史跡がある訳でもない。有料道路が平行して開通してからは、もっぱら通行料金を節約したいトラック や地元の車が走っているだけの寂れた3桁国道だ。
ヒロシは道なりに走るのがつまらない、と思ったので、脇道に入った。地図を見れば、国道と並んで、山の中腹を通り、ずっと北の町で再び合流している生活道路だ。
坂を登った後は、なだらかな道が山の腹帯みたいにカーブして続く。右側の住宅地や田畑の下を有料道路と国道が並んで通っているのが見えた。
後ろから、ブーンブーンとエンジン音を鳴らしながら、大型のバイクがやって来た。抜かれる時に、二人はライダーがヘルメットを被っていないのを目撃した。ヘルメットは背中にしょったリュックの上に乗っかる様に、首から紐で後ろに追いやられていた。
「危ないわね。」
とヨーコが呟いた。
「警察が来ないと思っているんだよ。風を感じて走りたいんだろ。」
「それはわかるけど・・・」
バイクのナンバーは隣の県の大都市のものだった。
バイクはあっという間にカーブの向こうに消えた。
二人の車はカーブの多い道路を慎重に走った。対向車と離合出来ない幅ではないが、カーブで中央を走る車も少なくない。
5つめのカーブを曲がったむこうで、バイクが停止しているのが見えた。
先ほどのバイクだ。ライダーは地面に下りて、頭を抱えてうずくまっている。
ヒロシは自分の車のタイヤの下でバリッと言う音を聞いた。
ヨーコが驚いた。
「え! 何?」
ヒロシは答えた。
「栗の毬だよ。」
路面に無数の緑や茶色の栗の毬が転がっていた。
バイクの青年は立ち上がったが、まだ手を頭に置いていた。
「だから、ヘルメットを被らなきゃいけないんだよ。装備は前もってするべきなんだ。」
とヒロシは呟いた。
二人はさらに走った。
北へ行くほどに落葉や木の実の落下物が増えていった。
「本日正午に○○共和国から飛んできたミサイルは凸凹県北部の上空1000メートル付近で爆発した模様です。
放射能の濃度はまだ発表されておりませんが、政府はただちに凸凹県に対し、住民の避難を・・・」
最初はオーカワチのダム湖に行った。ここは山の中腹と頂上にダムが二つあり、それぞれに湖がある。高低差を利用した水力発電所なので、見学施設も整っており、静かな湖畔とは言い難い。なにしろ観光客が多い。ダム見学の子供たちでいっぱいだった。
それでも高原の涼しい風とススキの野原に心は癒される。
ダムの下流には、多分電力会社から自治体に下りたお金で建てられたのであろう、小さなホテルがあった。観光の目玉はダムしかない田舎町だから、宿泊よりもレストランの客で保っているようなホテル。ヒロシとヨーコもそこで川魚を使ったフレンチで昼食を取った。
オーカワチの町を出ると、シルバーマインロードと呼ばれる国道を北に向かって走った。昔はこの付近に銀鉱山があって、その鉱石を港まで運んだ道 路なのだそうだ。と言っても、特に道筋にそれに縁のある史跡がある訳でもない。有料道路が平行して開通してからは、もっぱら通行料金を節約したいトラック や地元の車が走っているだけの寂れた3桁国道だ。
ヒロシは道なりに走るのがつまらない、と思ったので、脇道に入った。地図を見れば、国道と並んで、山の中腹を通り、ずっと北の町で再び合流している生活道路だ。
坂を登った後は、なだらかな道が山の腹帯みたいにカーブして続く。右側の住宅地や田畑の下を有料道路と国道が並んで通っているのが見えた。
後ろから、ブーンブーンとエンジン音を鳴らしながら、大型のバイクがやって来た。抜かれる時に、二人はライダーがヘルメットを被っていないのを目撃した。ヘルメットは背中にしょったリュックの上に乗っかる様に、首から紐で後ろに追いやられていた。
「危ないわね。」
とヨーコが呟いた。
「警察が来ないと思っているんだよ。風を感じて走りたいんだろ。」
「それはわかるけど・・・」
バイクのナンバーは隣の県の大都市のものだった。
バイクはあっという間にカーブの向こうに消えた。
二人の車はカーブの多い道路を慎重に走った。対向車と離合出来ない幅ではないが、カーブで中央を走る車も少なくない。
5つめのカーブを曲がったむこうで、バイクが停止しているのが見えた。
先ほどのバイクだ。ライダーは地面に下りて、頭を抱えてうずくまっている。
ヒロシは自分の車のタイヤの下でバリッと言う音を聞いた。
ヨーコが驚いた。
「え! 何?」
ヒロシは答えた。
「栗の毬だよ。」
路面に無数の緑や茶色の栗の毬が転がっていた。
バイクの青年は立ち上がったが、まだ手を頭に置いていた。
「だから、ヘルメットを被らなきゃいけないんだよ。装備は前もってするべきなんだ。」
とヒロシは呟いた。
二人はさらに走った。
北へ行くほどに落葉や木の実の落下物が増えていった。
「本日正午に○○共和国から飛んできたミサイルは凸凹県北部の上空1000メートル付近で爆発した模様です。
放射能の濃度はまだ発表されておりませんが、政府はただちに凸凹県に対し、住民の避難を・・・」
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