2013年11月1日金曜日

赤竜 2 その5

相棒のライリーは大柄な女性が好みだったので、レインボウブロウのことをいつも「ちっこい小娘」と陰で呼んでいた。オーリーが彼女を現場に連れて行くと言った時も
「ガキの遊びじゃないんだぜ」と文句を言った。オーリーは何故彼女を同伴しなければならないのか、上手く説明出来ないでいた。すると、彼女の方が機転が利いたので、
「海岸へ行くついで。」
と言い訳した。
「工場が海のそばだと聞いたので、乗せていってもらうことにした。」
 ライリーはオーリーを横目で見た。
「おまえのターゲットはイヴェインの方だと思ったんだけどな。」
 ライリーはイヴェインを乗せた方が嬉しいのだ。レインボウブロウでは会話が続かないので、退屈させられる。それでも、結局彼女を乗せて事件現場へ走っ た。走行中は彼女が後部席で大人しくしていたので、彼は彼女の存在を忘れてオーリーと世間話をした。刑事だって、四六時中仕事の話ばかりしていられないの だ。
 染色工場は操業を停めていた。貯水槽の水を抜いているので、仕事が出来ないのだ。給水係の男が刑事の相手をした。
「井戸からタンクまでの間のフィルターが三つとも穴が開いちまってね。」
 地下から水を汲み上げる太いパイプを見せながら、ディックと言う係は言った。
「取り替えなきゃ、仕事が出来ないんだ。今大急ぎでフィルターを届けさせているところなんだ。」
 大きな丸い二重構造のコンクリート製タンクはすっかり乾いてしまって、底に泥が白く固まっていた。
「あんなに泥が入り込むものなのかい。」
「いいや、フィルターが壊れたからだよ。このタンクの水は普段は透明で綺麗なものさ。気温の高い日には泳ぎたくなるほど綺麗だぜ。」
「昨日も綺麗だった?」
「昨日は大雨の後だったろう、そんな時は井戸も濁るんだ。うちの井戸は川に近いからね、水が混ざるんだろう。フィルターでも濾しきれない細かい泥が入り込む。白く濁っていた。」

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントを有り難うございます。spam防止の為に、確認後公開させて頂きますので、暫くお待ち下さい。
Thank you for your comment. We can read your comment after my checking.