「鱗?」
レインボウブロウは自分の肉体の話題は好きでない。ちょっと不機嫌そうに答えた。
「魚ではないのだ、剥がれたりしない。」
「つまり、ワニやトカゲみたいなモノだな。」
言わなくて良いことを言ってしまったと気付いた時には、顔に水を引っ掛けられていた。「下等なモノと一緒にするな、私はD・・・」
と言いかけて、レインボウブロウは言い直した。
「失礼な・・・」
「御免よ。」
彼女は何を言いかけたのだろう、と思いつつ、オーリーは慌てて本題に入ることにした。
「昨夜、市の南にある染色工場で殺人事件があった。警備員が殺されたんだが、現場にこんなモノが落ちていた。」
彼はポケットからビニル袋に入った銀色の物体を出した。大きさは大人の男性の親指ほどだ。靴べらの様にも見えた。レインボウブロウがそれを手にとって眺める間にハンカチで顔の水滴を拭った。
「靴べら?」
と彼女が間の抜けた質問をした。
「そう見えるのかい。」
「何を言って欲しい訳?」
オーリーは彼女の手から袋を取り返した。鱗がある人間から”靴べら”と宣告を受けた物体は、薄くて、靴べらとしての役割を果たせないように思えた。
「俺には靴べらに見えない。鑑識も魚の鱗じゃないかと言っている。」
「だったら、鱗でしょ。」
「どっちなんだ。」
「どっちだと言って欲しいの。」
オーリーはレインボウブロウの物の言い方がいつも曖昧なのだと、思い出した。彼女はちゃんと彼が知りたいことを言っているのでは?
「鱗でできた靴べらなのか?」
「他に鱗の用途がなければね。」
オーリーは考え込んだ。
「警備員が靴べらを持っていていけない、と言う規則はない。だが、不自然だ。巡回にそんな物を持っていくなんて。」
「警備員は射殺されたのか?」
「違う。」
彼はレインボウブロウを見た。
「貯水槽で溺死していた。全身に爪の様な物で引っかかれた様な傷が付いていて、彼は何かに引き込まれて抵抗したみたいだ。拳銃がタンクの外に落ちていて、一発発射されていた。」
レインボウブロウがもう一度彼の手から袋を受け取った。鱗を照明の光に透かして眺め、尖った爪で鱗のサイドをビニルの上から突いた。
「ここに、傷がある。銃弾で剥がれ落ちたのだ。」
「すると、犯人の物か。」
オーリーは自分の推測が支持されて満足した。しかし、これが犯人とどう結びつくのかは、解らなかった。
「犯人は鱗があるんだな。」
鱗がある娘は否定も肯定もしなかった。
「現場に行ってみなければね。」
と言ったのだ。
レインボウブロウは自分の肉体の話題は好きでない。ちょっと不機嫌そうに答えた。
「魚ではないのだ、剥がれたりしない。」
「つまり、ワニやトカゲみたいなモノだな。」
言わなくて良いことを言ってしまったと気付いた時には、顔に水を引っ掛けられていた。「下等なモノと一緒にするな、私はD・・・」
と言いかけて、レインボウブロウは言い直した。
「失礼な・・・」
「御免よ。」
彼女は何を言いかけたのだろう、と思いつつ、オーリーは慌てて本題に入ることにした。
「昨夜、市の南にある染色工場で殺人事件があった。警備員が殺されたんだが、現場にこんなモノが落ちていた。」
彼はポケットからビニル袋に入った銀色の物体を出した。大きさは大人の男性の親指ほどだ。靴べらの様にも見えた。レインボウブロウがそれを手にとって眺める間にハンカチで顔の水滴を拭った。
「靴べら?」
と彼女が間の抜けた質問をした。
「そう見えるのかい。」
「何を言って欲しい訳?」
オーリーは彼女の手から袋を取り返した。鱗がある人間から”靴べら”と宣告を受けた物体は、薄くて、靴べらとしての役割を果たせないように思えた。
「俺には靴べらに見えない。鑑識も魚の鱗じゃないかと言っている。」
「だったら、鱗でしょ。」
「どっちなんだ。」
「どっちだと言って欲しいの。」
オーリーはレインボウブロウの物の言い方がいつも曖昧なのだと、思い出した。彼女はちゃんと彼が知りたいことを言っているのでは?
「鱗でできた靴べらなのか?」
「他に鱗の用途がなければね。」
オーリーは考え込んだ。
「警備員が靴べらを持っていていけない、と言う規則はない。だが、不自然だ。巡回にそんな物を持っていくなんて。」
「警備員は射殺されたのか?」
「違う。」
彼はレインボウブロウを見た。
「貯水槽で溺死していた。全身に爪の様な物で引っかかれた様な傷が付いていて、彼は何かに引き込まれて抵抗したみたいだ。拳銃がタンクの外に落ちていて、一発発射されていた。」
レインボウブロウがもう一度彼の手から袋を受け取った。鱗を照明の光に透かして眺め、尖った爪で鱗のサイドをビニルの上から突いた。
「ここに、傷がある。銃弾で剥がれ落ちたのだ。」
「すると、犯人の物か。」
オーリーは自分の推測が支持されて満足した。しかし、これが犯人とどう結びつくのかは、解らなかった。
「犯人は鱗があるんだな。」
鱗がある娘は否定も肯定もしなかった。
「現場に行ってみなければね。」
と言ったのだ。
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