「その、レインボウブロウって娘なんだが・・・」
交代で事件を扱った刑事がオーリーに言った。
「何処で生まれて、親は誰なんだ。彼女に関する記録が何処にもない。ソーントンの社会保障番号やら免許に関する記録は見つかったのに、娘のものは全くないんだ。それに、近所の住人も出入りの食料品店の店員も、イヴェイン以外の女をあの屋敷で見たことがない。」
「でも、弁護士は知っていたし、レストランの常連みたいだった。多分、隠れて暮らしていたんだ。」
「何故だい。」
「彼女の目を見たかい。」
「目がどうした。」
オーリーは手を振った。
「いや、忘れてくれ。」
事件は他にも複数抱えていた。本署の殺人課と違って、一つに的を絞って捜査出来ないのが悔しい。一応担当なので、他の事件よりは時間を割けても、それだけに係りっきりにはなれなかった。
ソーントンの葬儀には顔を出した。首無し死体なので棺を開いて別れを告げることは出来なかったが、親族が一人もいなかったので、それは無事に済んだ。骨 董品の取引業者や古書のコレクターなど、そこそこ友人と名乗れる人々が来て、喪主のイヴェイン・カッスラーを哀しませずに済んだ。オーリーとライリーは出 来るだけ多くの人間を呼び止めて故人の人間関係について話を聞いた。どの人もソーントンを悪く言う者はいなかった。商売に関しては誠実で、妥当な値段で取 引をした、目利きで真贋の見分け方が上手かった。まがいものを扱ったことはないし、同業者とトラブルを起こしたこともなかった。オーリーは一人の故買屋か ら面白い情報を得た。
「偽物臭い18世紀の家具があってね、彼に鑑定を依頼したんだ。ああ、オーランドは家具と古書専門の骨董品屋だったんだ、知ってる?それでさ、彼は最初そ れを見た時、自分は自信がない、て言ったんだ。専門家を連れて来るから、売るのはもう少し待てって。それで、次の日に彼が連れて来たのが、10歳くらいの 小さなガキで、俺は冗談かと思った。ところが、そのチビさんが、テーブルの脚の部分の塗料をちょいと削って、口に入れた。」
故買屋はオーリーを見てニヤリとした。
「嘗めて塗料の成分を言い当てられる骨董品屋が此の世に何人いると思う?それに体には良くない行為だ。俺は”そんなことをしちゃ、駄目だよ”とその子に注 意してやった。ところが、オーランドの奴は俺に言ったんだ、”この子のやりたい様にやらせてやってくれ”ってね。」
「その子は塗料の分析に成功して、真贋を言い当てた?」
「そう、その通り。」
「その子、どんな色の目をしていました?」
「さてね、覚えてないな。薄暗い場所でね、オーランドが指定したんだが、明かりを灯すことを彼は拒否した。」
「子供の名前も覚えてないですか。」
「ああ、ビリーだったかな、デニーだったかな・・・」
「レニーでは。」
「そうだったかな。昔のことなんで、忘れちまったよ。」
有り難う、とオーリーが彼から離れかけると、その故買屋が付け足した。
「なにしろ、30年前の話だからな。」
えっとオーリーは振り返ったが、もうその故買屋は待たせていた自分の店の車に乗り込んで走り去ろうとしていた。
ライリーは何人かの古書のコレクターに当たっていた。オーランド・ソーントンはラテン語で書かれたかなり古い書物に詳しかったと言う。
交代で事件を扱った刑事がオーリーに言った。
「何処で生まれて、親は誰なんだ。彼女に関する記録が何処にもない。ソーントンの社会保障番号やら免許に関する記録は見つかったのに、娘のものは全くないんだ。それに、近所の住人も出入りの食料品店の店員も、イヴェイン以外の女をあの屋敷で見たことがない。」
「でも、弁護士は知っていたし、レストランの常連みたいだった。多分、隠れて暮らしていたんだ。」
「何故だい。」
「彼女の目を見たかい。」
「目がどうした。」
オーリーは手を振った。
「いや、忘れてくれ。」
事件は他にも複数抱えていた。本署の殺人課と違って、一つに的を絞って捜査出来ないのが悔しい。一応担当なので、他の事件よりは時間を割けても、それだけに係りっきりにはなれなかった。
ソーントンの葬儀には顔を出した。首無し死体なので棺を開いて別れを告げることは出来なかったが、親族が一人もいなかったので、それは無事に済んだ。骨 董品の取引業者や古書のコレクターなど、そこそこ友人と名乗れる人々が来て、喪主のイヴェイン・カッスラーを哀しませずに済んだ。オーリーとライリーは出 来るだけ多くの人間を呼び止めて故人の人間関係について話を聞いた。どの人もソーントンを悪く言う者はいなかった。商売に関しては誠実で、妥当な値段で取 引をした、目利きで真贋の見分け方が上手かった。まがいものを扱ったことはないし、同業者とトラブルを起こしたこともなかった。オーリーは一人の故買屋か ら面白い情報を得た。
「偽物臭い18世紀の家具があってね、彼に鑑定を依頼したんだ。ああ、オーランドは家具と古書専門の骨董品屋だったんだ、知ってる?それでさ、彼は最初そ れを見た時、自分は自信がない、て言ったんだ。専門家を連れて来るから、売るのはもう少し待てって。それで、次の日に彼が連れて来たのが、10歳くらいの 小さなガキで、俺は冗談かと思った。ところが、そのチビさんが、テーブルの脚の部分の塗料をちょいと削って、口に入れた。」
故買屋はオーリーを見てニヤリとした。
「嘗めて塗料の成分を言い当てられる骨董品屋が此の世に何人いると思う?それに体には良くない行為だ。俺は”そんなことをしちゃ、駄目だよ”とその子に注 意してやった。ところが、オーランドの奴は俺に言ったんだ、”この子のやりたい様にやらせてやってくれ”ってね。」
「その子は塗料の分析に成功して、真贋を言い当てた?」
「そう、その通り。」
「その子、どんな色の目をしていました?」
「さてね、覚えてないな。薄暗い場所でね、オーランドが指定したんだが、明かりを灯すことを彼は拒否した。」
「子供の名前も覚えてないですか。」
「ああ、ビリーだったかな、デニーだったかな・・・」
「レニーでは。」
「そうだったかな。昔のことなんで、忘れちまったよ。」
有り難う、とオーリーが彼から離れかけると、その故買屋が付け足した。
「なにしろ、30年前の話だからな。」
えっとオーリーは振り返ったが、もうその故買屋は待たせていた自分の店の車に乗り込んで走り去ろうとしていた。
ライリーは何人かの古書のコレクターに当たっていた。オーランド・ソーントンはラテン語で書かれたかなり古い書物に詳しかったと言う。
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