2013年3月24日日曜日

初鰹

小説「南国太平記」のテレビドラマ化されたものは、人物設定やその人の運命、物語の結末やらが変えられていて、暗く湿っぽくなって、あまり面白いものではなかった。
けれど、一カ所だけ、原作にはなくてドラマだけにあるシーンが印象に残っている。
主君の仇を討つために主人公の一家は脱藩して一家離散するのだが、明日はその旅立ちの日、と言う時に、母親が奮発して初鰹を買う。当時、初鰹は一尾一両 (約5万円)する高価な魚で、主人公のような下級武士が買える代物ではなかった。家族がそろって取る最後の夕食に母親は鰹を買った訳だ。鰹は、父と母の故 郷、薩摩の味だった。そして、その捌き方を娘(夏目雅子さん)に母親が教える。包丁の入れ方、内臓の取り方等。
 ぼーっと見ていたら、横で父が呟いた。
「母親が娘に教えてやれる最後の躾やなぁ・・・」

原作でもドラマでも、母親と娘は不幸な最期を遂げる。

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