2013年10月11日金曜日

赤竜 1 その27

 レインボウブロウにもらった「赤竜」には魔術に用いる品物や手順が書かれていた。ラテン語なので、死者の 復活の項目を探すのに骨を折ったが、どうにか見つけだした。材料らしき物を書き留め、それを持って紹介されたコールドマン魔法店に行くと、冴えない顔の中 年の男がレジの向こうで新聞を読んでいた。新聞は近所のスタンドで買ったもので、魔法通信とかの類ではなかった。ドアベルの音で、彼は振り返った。オー リーは「今日は」と言い、メモを取りだした。
「最近、こんな物を買いに来た客はいませんでしたか。」
 店番はメモを眺めた。
「ああ、死者復活の儀式ね。よくあるよ。」
「よくある?」
「うん、愛する人間を亡くすと、なんとしてでも生き返らせたいと願う人さ。時々本を読んだり、インチキ呪い師にそそのかされて儀式をやるんだ。」
「その儀式は、効き目はない?」
「ある訳ないよ。本当の魔法使いじゃないのに。」
「本物がやれば、生き返る?」
「さあね、聞いたことないね。」
 男はオーリーをジロリと見た。
「あんた、客じゃないね。」
 仕方なくオーリーはバッジを出した。店番は溜息をついた。
「最近ここに来るって言えば、頭がおかしな奴か、警察くらいだね。」
「最後に本物の客が来たのは何時。」
「いつかな・・・」
 店番は考え込んだ。
「本物です、て名乗る訳じゃないから。でも、品選びが上手い客はいる。勉強しているんだね、きっと。」
「それは女性かな。」
「いいや、男。体のでかい濃い口ひげのおっさんで、何か硬い職業に就いている雰囲気だった。だから印象に残った。魔法に興味持つように見えなかったから。」
「それは何時頃の話かな。」
「二週間前、否、三週間前かな。」
「何を買ったか覚えているかな。」
 店番はオーリーが初めて耳にする様な薬草や器具の名前を挙げた。
「何に使うか、わかりますか。」
「さてね、いろいろ応用が利く品だからね、特定したければ、”赤竜”を読めばいい。書いてあるよ。」
「ラテン語は苦手で・・・」
とオーリーが白状すると、店番が笑った。
「英語訳があるさ。買うかね。」

 人間の頭部の骨が見つかった。町外れの墓地で墓参の家族連れが見つけたのだ。オーランド・ソーントンの墓石の上にこれみよがしに置かれていた骨には薄い白髪が微かに残っていた。短期間で白骨化するはずがない。故意に虫や何かに肉を食らわせて骨だけにしたのだ。
 警察はカッスラーに連絡を取って身元確認を依頼した。オーリーが非番の日で、たまたま彼はカッスラー家でレインボウブロウにコールマン魔法店で聞き込ん だ品物が何に使われるのか尋ねているところだった。イヴェインはまた留守だった。クーパー弁護士に仕事を紹介してもらうのだと言って出かけていた。昼間は 滅多に外出しないレインボウブロウが一人で地下室の洗濯場で壁を掘っていた。また秘密のプールを造っているのだ。オーリーは彼女がシャベルも何も使わない で手掘りしていることに驚いた。バケツに土を入れていたところを邪魔されて彼女は不機嫌だった。
「家に入る許可を出した覚えはない。」
「ベルを何度も鳴らした。ドアが開いていたのに返事がないから、何かあったかと心配に
なって入ったんだ。そしたら地下室で物音がするじゃないか。」

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