2012年3月5日月曜日

夜道

 これは「実際にあったこと」と人から聞いた話だが・・・。

 乾燥室で働くNさんが、ある夜、飲み屋で仲間と一杯ひっかけて、ほろ酔い気分で自転車に乗ってたんぼ道を家路についていた。
 竹藪のはずれで、道端に女の人が立っているのが見えた。近づくと、知り合いのスナック店員で、彼女も家路についているらしい。
 「今晩は。 一人で歩いて帰るの?」
声をかけたら、彼女が振り返ってにっこり笑った。
「あら、今晩は。うちはこの近くなの。心配しなくても大丈夫よ」
 そして彼女はこう言った。
「そちらも、お一人? 良かったら寄ってかない?」
Nさん、ちょっとどきどき。普段なら、そんな誘いに乗らないんだけど、酔っていたので、ついふらふらと・・・。
「いいの?悪いなぁ・・・」
 彼女の家は本当にすぐ近くで、座敷に上げてもらい、そこでまた酒とおつまみを出された。
 それからNさんがいよいよ酔いが廻って自転車に乗るのが辛いな、と思い始めた頃、彼女がまた誘った。
「良かったら、お風呂が沸いているから、入っていきなさいな」
 Nさん、遠慮無くお風呂に入った。ほど良く温かで、気持ち良くなって、お湯に浸かったまま、寝込んでしまった。

「あれ、Nさん、なんでそんなところに入ってるの?落ちたの?」

 誰かの大声で、Nさんは目覚めた。



 田んぼの中の、肥だめの中で・・・。

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