2012年4月10日火曜日

尾行 3

どうも誰かに見られているような気がする。家と大学の行き帰り、誰かに見られている。つけられているのだろうか?
特にそんな気が強く感じられるのは、バスの中。
さりげなく振り返って見る。
短い路線だ。顔ぶれは大体わかっている。

ちょっと化粧が濃いのは、ホルモン焼き屋の奥さん。夕方、忙しくなる時間の一寸前に家に一時帰宅して子供にご飯を食べさせる。店はバス停3つ向こうだから、そんなに時間はかからない。
くたびれた顔で外を眺める中年男二人。どちらも近所の会社員だ。不景気で残業がないので毎日定刻帰宅。奥さんが鬱陶しがっていることだろう。
買い物帰りらしい主婦数名。大体見かける顔だ。
終点まで乗っていく女子学生。高校生時分から同じバスによく乗り合わせている子。今は窓の外を見ている。
彼女の後ろの席の若い男は・・・あれ? 一瞬目があって、逸らしたな。
あいつが、私を見つめていたのか? 何故だ?
そう言えば、見かけない顔だ。あの男が私を尾行しているのか?
それとも・・・一番後ろの席で、俯いている、これも見かけない男。背広姿だが、ネクタイはしていない。怪しいじゃないか。
まさかな・・・あの件が大学にばれたか?

ああ、そろそろ降りる停留所だ。 降りてみればわかるだろう。 あの二人の男のどちらかが、私を盗み見していたことを。

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